オーム社オンラインスクール講座「基礎力養成コース 電験三種 電気数学」で講師を務める川尻 将 先生が第三種電気主任技術者試験の難易度を解説します。
はじめに
前回の記事で電験三種は試験範囲が広く、継続的な学習が必要であるというお話しをさせていただきました。
そうなると、次は実際にどのくらい勉強すればいいのかということが気になりますね。
今回は、電験三種に合格するために必要な勉強時間についてお話をしていきます。
人によって必要な勉強時間は違うが、大きく差がつく要素はある
電験三種を受験するにあたり、あらかじめ電気の専門知識があれば当然アドバンテージになります。
でも、そのおかげで勉強時間を大きく短縮できるかというと、それほど効果はありません。
私がサポートさせていただいた受験生の中には、もともと設備管理の仕事に従事している方、学生時代に電気工学を専攻していた方が多くいます。
一方、電気と違う機械や化学に関わる方、文系の学部を卒業された方など、電気とは無縁の人生を歩んできた方もいます。
このように分けると、前者のほうが短い学習期間で合格できるように感じるかもしれません。
しかし、実際にはあまり差がありません。文系の方が半年程度の学習期間で合格されることもあります。
ですが、サポートをさせていただくと、短い期間で合格される方とそうでない方の違いははっきりと分かります。
それは、「計算力」が身についているかどうかです。
ここでいう「計算力」とは、方程式の立式や式の整理がスムーズにできるかどうかです。
ベクトルや複素数などの高校数学が分かっているかどうかではありません。
問題文から式を作り、その式を整理して答えを導出する。
このスピードが速い方は比較的短い学習期間で合格することができます。
なぜ、計算力が勉強時間に影響するのか?
電験三種の受験生の多くは社会人であり、仕事をこなしながら勉強時間を捻出しなければなりません。
そうすると、限られた時間を効率的に利用することを意識して学習を進める必要があります。
そのために、分かりやすい書籍や動画教材などを探し続ける受験生はたくさんいるわけですが
最も効率的に学習を進める方法は「速く解く力」を早期に身につけることだと私は考えます。
例えば、計算に慣れていなくて、理論の過去問1年分を解くのに3時間かかる状態だとします。
1日1時間のペースで学習進めていくと、1年分解くのに3日、10年分解くのに1カ月かかります。
計算力を身につけて、試験時間と同じ1時間半で理論の過去問1年分を解けるようになったとしたらどうでしょうか?
同じ3日間で2年分の過去問を解くことができ、10年分の過去問は2週間で解くことができます。
このように計算力があれば、過去問の周回を短い期間に終えることができ、勉強時間を短縮することができます。
過去問を速く周回できても、電気の知識がなければ、そのための時間が必要じゃないのかと感じると思います。
確かにその通りです。
電気の知識のことは一旦置いておいて、「記憶力」というものに焦点を当ててみたいと思います。
さて、皆さんは2週間前のことと1ヶ月前のことどちらがはっきり覚えているでしょうか?
当然、2週間前のことのほうがより多くの情報を思い出せるはずです。
10年分の過去問についても同じです。
最初の頃に解いた問題について多くのことを思い出せるのは、2週間で10年分解いた場合です。
学習の基本は、インプットとアウトプットです。
覚えることに専念しても、問題を解く機会が無ければ、その知識はなかなか脳に定着しません。
過去問を解くことがアウトプットであり、その機会を増やすためには、解くスピードを上げることが重要になります。
また、計算力が不十分だと、計算手順を理解することに脳のリソースの大半が使われてしまいます。
そうなると、問題の解説を読んでいても、数式の変形を理解することに追われてしまい
その解説で伝えたい電気の知識や考え方などに頭が回らず、計算過程を覚えるだけの作業になってしまいます。
まとめ
以上のことをまとめてみましょう。
<計算力が不十分だと>
・問題を解くのに時間がかかるため、前にやったことを忘れてしまう
・アウトプットの機会が少なく、記憶の定着が鈍くなる
・計算過程を覚えることに意識が集中し、電気的な知識が身につきにくい
<計算力が身についていると>
・前にやったことを覚えている状態で、学習の反復ができる
・アウトプットの機会が増え、記憶の定着が進む
・計算過程を確認する必要がないので、電気的な知識を身につけることに集中できる
計算力の有無を比べてみると、計算力が学習効率に大きく影響することが分かりますね。
勉強時間を短くしたいなら、まずは計算力を身につけるところから始めてみましょう!
川尻 将 kawajiri Sho
京都大学大学院卒業後、キヤノンメディカルシステムズ株式会社にてMRI装置の電源開発職に従事する傍ら2020年に電験三種・二種を初受験&同時合格。現在は電験向けオンライン講師として活動中。月刊誌「新電気」で2022年より「半導体どうでしょう」(現在は「電子回路どうでしょう」)を連載中。
川尻先生が講師を務めるオーム社オンラインスクール講座
基礎力養成コース 電験三種 電気数学
電気数学とは、電気回路や電気磁気学など電気の計算をするときに使われる数学の総称で、電験三種試験の「理論」「電力」「機械」「法規」各科目で出題される計算問題を解くために必須の知識です。
この講座では、オーム社のロングセラー書籍「完全マスター電験三種受験テキスト 電気数学」をテキストとし、電験三種に合格するために必要な内容に絞った講義動画を収録。
電験三種だけでなく電験二種で使用する数学の知識までカバーしているテキストの中から、電験三種試験合格に必要な部分を短時間で集中して学習できるよう、重要な分野のみ解説。さらに、例題・練習問題の解説では、ホワイトボードを用いて計算式を丁寧に展開し、問題の解き方のポイントを紹介しています。
講座で使用するテキストは「完全マスター電験三種受験テキスト 電気数学(改訂2版)」です!
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投稿者プロフィール
- オーム社オンラインスクール「基礎力養成コース 電験三種 《電気数学》」「電験三種合格 直前ゼミナール」講師。京都大学大学院卒業後、キヤノンメディカルシステムズ株式会社にてMRI装置の電源開発職に従事する傍ら2020年に電験三種・二種を初受験&同時合格。現在は電験向けオンライン講師として活動中。月刊誌「新電気」で2022年より「半導体どうでしょう」(現在は「電子回路どうでしょう」)を連載中。
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