電気主任技術者とは?仕事・試験の概要・合格率を解説!

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オーム社オンラインスクール講座「基礎力養成コース 電験三種 電気数学」で講師を務める川尻 将 先生が電気主任技術者の仕事内容・試験の概要・合格率・資格の特徴などを解説します。

電気主任技術者とは

電気主任技術者とは、簡単にいうと大きな電気設備の安全に使い続けるための保安監督を行う技術者のことをいいます。

専門的にいうと「事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるため、電気設備設置者が電気事業法上、置かねばならない電気保安のための技術者のこと」をいいます。

普段生活をしていて、電気主任技術者がどこでどんな仕事をしているかイメージが湧かない方は多いと思います。

大きな電気設備を有する施設では、電気主任技術者を選出して国(経済産業省)に届出を出さなければいけません。

大きな電気設備というと、発電所、変電所、ダム、鉄道会社、工場など、電気インフラ事業や工業に関わるものをイメージするかもしれません。

実際には、ショッピングセンターやアウトレットモールなどの商業施設、病院、ホテル、コンビニエンスストアなど、私たちの生活に関わる身近な施設でも、電気主任技術者が保安監督を行っています。

電気主任技術者の業務

例えば、電気主任技術者がショッピングセンターの保安監督をする場合を紹介します。

ショッピングセンターのイメージ

電気主任技術者の仕事は、ショッピングセンターを建設するところから始まります。施設で扱う電気を電力会社から受け取るための電気設備を検討し、その設備の工事計画も考えて、経済産業省に届出をします。

ショッピングセンターの建設が完了したからといって、すぐに電気を使うことはできません。電気設備の工事が適切に行われているか、そして、電気設備が安全に使える状態になっているかを確認します。

ショッピングセンターが営業を開始すると、電気主任技術者は電気が安心して使えるように、電気設備の点検を行います。点検は日常点検と定期点検に分けられます。日常点検は、電気系統の外観確認(傷や焼損がないか)や計測器の数値を確認します。定期点検では、ブレーカーなどの異常時に動作する設備の機能確認を行います。

定期点検は異常を想定して設備状態を確認する必要があるため、ショッピングセンターが営業中に点検作業を行うことはできません。ですので、ショッピングセンターの定休日または営業後の夜中から夜明けにかけて点検作業を行う必要があります。定期点検は時間的な制約が大きく、ショッピングセンターのような大きな施設では数十人の技術者が集まり、組織だって一斉に設備の点検を行い、時間内に点検作業を完了させます。

定期点検は1年または3年おきに実施されます。特に年末や年度末などの節目の時期に定期点検が設定されることが多く、この時期は電気主任技術者にとって繁忙期となります。

他にも、施設の技術者が安全に作業できるように保安管理規定を作ったり、電気事故が発生したら速やかに停止・復旧作業行い、経済産業省に事故報告を行います。

要するに、施設の電気安全に関することを一手に引き受けるのが電気主任技術者の仕事だとイメージいただければよいでしょう。

電気主任技術者が関わる施設かどうかを見極めるのは簡単で、その建物の近くの電柱の上に写真1のような四角い箱があったり、写真2のような「変電設備」といういかにも電気っぽいシールが貼ってある物置くらいの箱がおいてあれば、間違いなく電気主任技術者が保安監督を行っている施設です。

写真2

こういった設備は私たちの身の回りに結構たくさんありそうじゃないですか?
病院に医師、飲食店に調理師、薬局に薬剤師が必要なことと同じように、これらの設備がある建物には必ず電気主任技術者が必要になります。

電気主任技術者になる方法

では、どうすれば電気主任技術者になれるのか?

電気主任技術者になるためには、「認定取得」または「試験合格」の2つの方法があります。

認定取得とは、
“認定校とされる学校で指定された単位を取得したうえで卒業”し、“数年間の実務経験” を積み、
実務経験を積んだ会社から“電気主任技術者としての適性を認める書類を準備して申請”する必要があります。

認定校は工業高校、専門学校、短期大学、大学のいずれかであり、個人で書類の申請はできません。
従って、認定取得は限られた人しか利用できない限定的な方法であるということになります。

一方、試験合格は、電気主任技術者試験、通称「電験」に合格することを意味します。
電験に受験資格は不要で、年齢、学歴、実務経験に関わらず誰でも受験することができます。

また、電気主任技術者には、電圧レベルにより、
 ・第1種電気主任技術者(17万ボルト以上)
 ・第2種電気主任技術者(5万ボルト以上17万ボルト以下)
 ・第3種電気主任技術者(5万ボルト以下)

に分類され、第3種電気主任技術者試験は電験三種と呼ばれ、令和4年度では約6万人が受験する試験となっています。

一般財団法人 電気技術者センター資料を参考に作成

6万人前後の受験者の国家試験の例を挙げると、看護師、行政書士、登録販売者、介護支援専門員(ケアマネジャー)、社会保険労務士といった聞きなじみのある職業がいくつもあることが分かります。

電気主任技術者という職業はテレビや新聞などで目にすることはないかもしれませんが、私たちの生活を陰で支える重要な職業として、いろんなところで活躍しているということが分かりますね。

電気のことが分からなくても、電気主任技術者が具体的にどんな仕事をするかが分からなくても、電験という試験に合格さえすれば、電気主任技術者として働く道を開くことができます。

経済産業省によると電気主任技術者の数は減少傾向にあり、2030年には第2種電気主任技術者は1000人程度、第3種電気主任技術者は800人程度不足する(監督が必要な電気設備よりも主任技術者が少なくなる)という状況であり、電気主任技術者の需要は非常に高くなっています。

2022年1月17日 第9回 産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 電力安全小委員会 電気保安制度ワーキンググループ 資料1より引用

国としても、電気主任技術者を増やしていくために、2022年度から電験三種の試験を年1回から年2回に増やしました。
さらに2023年度からは平日に受験ができるようにCBT試験による受験期間を新設しました。

試験の回数も増え、市場価値が高くなっており、電気主任技術者という新しい道に挑戦するなら今でしょう!という状態になっているわけです。

それなら、とりあえず試験を受けて資格を取っておくかという気持ちになっていただければ、資格講師としてこれほどうれしいことはありません。

ですが、非常に残念なことを私はお伝えしなければなりません。

この電気主任技術者試験、合格率が10%前後という非常に難しい試験なのです。

「まぁ、1種から3種までレベルが分けられているんだから、1種はやっぱり難しいんでしょ」と感じるかもしれません。

残念ながら、電験三種でさえ合格率は10%前後なのです。

「試験毎に合格率が10%前後になるように、合格点が調整されているんじゃないの?そりゃ、合格するのは大変だね。」って思うかもしれません。

そういう試験ではないんです。

合格点は60%(電験三種の場合100点中60点)以上で合格となります。
つまり電験三種は60点以上とれば、何千人でも何万人でも合格となり電気主任技術者になることができるんです。
でも、合格率は10%前後です。ということは、純粋に難しい試験だということが分かりますね。

第3種電気主任技術者試験とは

では、電験とはどんな試験なのかでしょうか。ここでは、電験三種について説明します。

電験三種は、
 ・「理論」、「電力」、「機械」、「法規」の4科目の筆記試験
 ・試験はマークシート方式
 ・試験時間は、「理論」、「電力」、「機械」が90分、「法規」が65分
 ・問題数は、「理論」、「機械」が18問(選択問題を含む)「電力」が17問、「法規」が13問
となっています。

各科目では、以下のようなテーマを扱います。

細かく分類すると何やら小難しい専門用語が並んでおり、読む気が無くなってしまいますね。

要約すると『電気の基礎から応用技術、電力設備とそれに関する法律』を問われる試験だということです。

つまり、電気主任技術者になるためには電気に関する幅広い知識が必要だということが分かります。

試験が難しくて、4科目もあって、これじゃあ合格できる気がしないと感じたかもしれません。

そんなあなたに朗報です。

電気主任技術者試験には「科目別合格制度」という受験生にとって魅力的な制度があります。

この制度により、4科目中、一部の科目だけ合格した場合は、「科目合格」となり、最初に合格した試験以降、その申請により最大で連続して5回まで当該科目の試験が免除されます。

例えば、1回目の試験で理論科目に合格した場合、次回以降2回目から6回目の試験まで理論科目は合格扱いとなり、受験不要となります。

この制度をうまく活用すれば、

1回目の試験で理論科目に合格
3回目の試験で機械科目に合格
5回目に電力科目に合格
6回目に法規科目に合格

という流れで受験を進めることができ、3年間で電験三種を取得することができます。

今は電気のことが全く分からなくても、コツコツと勉強を進めていけば、合格ができる試験になっています。

電験三種は毎年8月と3月(CBTの場合は7月と2月)に実施されるため、半年毎に受験できるようになったため、一度の試験でよい結果がでなくてもモチベーションをおとすことなく、次回の試験に向けて勉強を進めることができます。

まとめ

では、これまでのことをまとめてみましょう。

第3種電気主任試験(電験三種)とは、以下のような試験です。
 ・電気主任技術者が不足しており、国として需要が高まっている
 ・合格率が10%前後の難関資格である
 ・受験資格は不要で誰でも受験できる
 ・試験は年二回、CBT方式の導入もあり、受験しやすくなった
 ・科目別合格制度があり、コツコツ勉強を進めれば合格できる

今日初めて電験三種という試験を知ったあなた、受験しようと思っていたあなた、今からでも全然遅くありません。

電気主任技術者を目指して、電験三種に挑戦してみましょう!


川尻 将 kawajiri Sho

京都大学大学院卒業後、キヤノンメディカルシステムズ株式会社にてMRI装置の電源開発職に従事する傍ら2020年に電験三種・二種を初受験&同時合格。現在は電験向けオンライン講師として活動中。月刊誌「新電気」で2022年より「半導体どうでしょう」(現在は「電子回路どうでしょう」)を連載中。

川尻先生が講師を務めるオーム社オンラインスクール講座
基礎力養成コース 電験三種 電気数学

電気数学とは、電気回路や電気磁気学など電気の計算をするときに使われる数学の総称で、電験三種試験の「理論」「電力」「機械」「法規」各科目で出題される計算問題を解くために必須の知識です。

この講座では、オーム社のロングセラー書籍「完全マスター電験三種受験テキスト 電気数学」をテキストとし、電験三種に合格するために必要な内容に絞った講義動画を収録。

電験三種だけでなく電験二種で使用する数学の知識までカバーしているテキストの中から、電験三種試験合格に必要な部分を短時間で集中して学習できるよう、重要な分野のみ解説。さらに、例題・練習問題の解説では、ホワイトボードを用いて計算式を丁寧に展開し、問題の解き方のポイントを紹介しています。

基礎力養成コース 電験三種 電気数学(サンプル動画)

講座で使用するテキストは「完全マスター電験三種受験テキスト 電気数学(改訂2版)」です!

「完全マスター電験三種受験テキスト」シリーズの別巻的な位置づけである「電気数学」の改訂版です。  電験三種の4科目で出題される計算問題では、電気数学の知識が必要になってきます。そこで、本書は、電験三種の計算問題に必要な電気数学を題材に、図やグラフを多く用い、視覚的にわかりやすいようにするだけでなく、ポイントとなるところには吹出しで補足説明を入れていますので、文系出身やあまり予備的な知識がない方でも学習しやすい1冊になっています。  また、電気数学の基本的な知識だけではなく、電験三種の問題を例題として取り入れることにより、学んだ電気数学の知識を実践でき、より理解が深まるような紙面構成になっています。
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投稿者プロフィール

川尻将
川尻将
オーム社オンラインスクール「基礎力養成コース 電験三種 《電気数学》」「電験三種合格 直前ゼミナール」講師。京都大学大学院卒業後、キヤノンメディカルシステムズ株式会社にてMRI装置の電源開発職に従事する傍ら2020年に電験三種・二種を初受験&同時合格。現在は電験向けオンライン講師として活動中。月刊誌「新電気」で2022年より「半導体どうでしょう」(現在は「電子回路どうでしょう」)を連載中。