電験三種試験の得点が伸び悩んでいる方必見!「オーム社オンラインスクール講師 山下 明先生の電験合格作戦」

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電験三種試験に合格するための勉強時間や方法は人よって様々ですが、なかなか勉強の成果が試験の得点に反映されず、歯がゆい思いをされている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、元工業高校の教員で、オーム社オンラインスクールで講師を務めている山下 明先生から、これから電験三種の勉強を進めるみなさんへのアドバイスをご紹介します。

※本記事は、月刊誌『新電気』2021年5月号の記事の内容をウェブ用に再構成したものです。

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山下明先生プロフィール

1991年大阪府出身。高校在学中に電験三種試験に合格。大阪市立大学工学部(電子・物理工学科)在学中に、工業高校で使用される「電気基礎」の教科書を発行。現在は「やさしく語る電気のイメージ 電気機器の入門講座」を連載中。茶道を嗜んでいることもあり、和服が定番スタイル。

コロナ禍での学習

2020年から、新型コロナウイルスの影響を受け、オンラインでの講習を依頼される機会が増えました。オーム社でもオンライン講師を依頼いただき、電験三種の講習を収録いただきました。カメラに向かってお客さん(生徒)のいない教室で授業をするのにも多少は慣れてきました。

学生もお勤めの方も、オンラインを利用した学習の機会は多くなったのではないかと思います。電気技術者試験センターでも、CBT が導入されることが決まり、どんどんICT の利用が必須になってきていますね。電験の出題分野も情報工学からの出題が幅を広げそうな気がします。

電験三種を学ぶということ

さて、電験三種を「学ぶ」ということで、「理論」「電力」「機械」「法規」の4科目をどのように攻略すればよいか、私の考えを述べていきます。私は「電験三種は「理論」に始まり「理論」に終わる」と考えています。図1に、電験三種の各4科目の関係を示します。

図1 電験三種の各科目の関係
図1 電験三種の各科目の関係

4科目のほかに、基本的な文章を理解するための「国語力」と理論を理解するために必要な「電気数学」も図示されています。国語力と電気数学が下地となって「理論」が積み上げられます。これらの土台の上に、応用として「電力」「機械」「法規」が位置付けられます。

まず、いずれの科目にも国語力は不可欠です。国語力と漠然といわれても、どのような試験対策をすればよいか困りますね。ここで必要な国語力とは、国語の授業で学ぶ文法や漢字のレベルではなく、

・「思考力」や「想像力」(全科目に必要)
・「法律用語の語彙力」(法規科目に必要)

とイメージいただきたく思います。日本語がネイティブであれば、文法や漢字のレベルに大きな問題はないでしょう。私は何度か外国人の電験指導をさせていただいたことがあるのですが、多くの専門用語や、古めかしい法律用語に苦戦されながらも(そこは日本人でも同じですが)、単語の意味さえ辞書で把握できれば母国語の思考力で対応されているように感じます。

試験対策に必要な国語力のうち、思考力や想像力を具体的に言えば、

  • 一般性の高い抽象的な思考力
  • 目に見えないものを把握する想像力
  • 論理的な思考力(電気数学につながる)

などと書き表すことができるでしょう。後で述べますが、電験(特に理論科目)は、抽象的概念(目に見えない電磁気現象や電気・電子回路の動作、法律の適用など)を扱うため、数学的裏付けに基づく論理的な思考力と、一般性の高い抽象的な思考力が求められます。そこを突破し、各科目の内容をつなぎ合わせ、活用できるだけの能力が必要なのです。

もちろん各科目の内容は理解する必要がありますが、試験で点数を取るためには、この思考力が必要であると感じます。

ただ、電験三種は試験である以上、正解があることを前提とした問題しか出題されないため、正解を導くために必要な思考力はある程度の「慣れ」で培うことができます。あまり深く悩まず、まずは各単元を学び、問題演習を繰り返すことで「慣れ」ることができます。これはスポーツや楽器の練習と同じです。

野球もバットの振り方を学ぶことは大切ですが、練習でもいいので試合に出てみないと本当の野球はわからないでしょう。ピアノやクラリネットも、音階(スケール)は大切ですが、実際の曲を練習しないと上手くなりません。電験も同じで、問題を解いてみないと、思考力を鍛えることはできません

合格に向けた作戦

前述のとおり、「電験三種は「理論」に始まり「理論」に終わる」と私は思っています。「電力」「機械」「法規(の計算問題)」を学ぶためにまずは「理論」を勉強することが必要ですから、当然「理論」から、場合によっては電気数学から勉強を始めます。

しかし、理論のテキストを1周する程度では、合格点を取ることは難しいのではないでしょうか。

一度、「理論」を勉強してみて、ほかの科目でどのように利用されているのか応用例をいくつも学んでいるうちに、「理論」を勉強する意味や目的がわかってくると思います。

私は昔、茶道を習っていたことがあるのですが、お茶の心をまとめた「利休百首」というものの中に次の句があります。

稽古とは一より習い十を知り十よりかえるもとのその一

千利休「利休百首」より
千利休

なんだか、電験にも共通するところを感じますね。

さて、合格に向けた作戦ですが、さまざまな読者のニーズが想定されます。学生の方とお勤めされている方、1回で全科目合格を目指される方、科目合格制度をうまく利用される方……。それぞれにいろんな作戦があるでしょう。しかし、いずれにしても、まずは「理論」を勉強してみて(場合によっては電気数学から始める)、ほかの科目を勉強していくのがよいでしょう。そして、もう一度「理論」を勉強されるとよいでしょう。

電気数学に求められるのは、中学校で学ぶ数学に加えて、

  • 三角関数
  • 複素数(フェーザ・ベクトル・記号法)
  • 指数関数・対数関数

です。市販の電気数学の教材で、上述の内容がカバーされていれば大丈夫です。

 市販のテキストで、4科目を勉強され、テキスト中の練習問題をすべて解くことができるようになったら、過去問を数年分解きましょう。時折、突拍子もない難問が出題されることもありますが、試験の雰囲気に慣れておくことと、実際の試験時間を(理論・電力・機械は90分、法規は65分)体感しておくことは大切です。

全問、新規作成。実力試しや勉強の総仕上げに最適の1冊  電験三種に合格するには、「参考書で内容を理解し」「過去問で問題を解き、内容に慣れ」「応用力を養う」というプロセスが必要です。特にここ数年は、難問・奇問・高難易度の問題が出題される傾向が高く、「応用力を養い、問題の形が変わっても対応が取れるように対策しておく(過去問ではない新しい問題に慣れておく)」ことも重要になっています。  本書は、過去問ではなくすべて新規に作成された問題を収録しています(4科目×3セット)。また、解答・解説ページに各問題の難易度を表記したので、自らの実力が測りやすい構成になっています。本試験前の実力試しには最適な一冊です。
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「理論」の難しさ

「理論」が電験4科目の中で重要な位置付けであるにもかかわらず、電験を指導させていただき、一番難しいと感じるのは「理論」科目です。

「教える」側にとっても、「学ぶ」側にとっても、どちらにとっても難しいと感じます。なぜなら、試験本番で出題される問題は、ほぼすべてがテキストで見たことのないようなものばかりだからです。「理論」科目で登場する内容の適用範囲がとても広いため、いくらでも新作問題を作ることができるのです。

「鳳-テブナンの定理」を例に、「理論」の難しさについて触れてみたいと思います。市販のテキストでは、鳳-テブナンの定理を次のように掲載しているものが多いのではないでしょうか。

鳳ーテブナンの定理

任意の回路網のインピーダンス\(\dot{Z}\)に流れる電流\(\dot{I}\)は、開放端電圧を\(\dot{E}\)、回路網内部の合成インピーダンスを\(\dot{Z}_0\)とすれば、

$$ \dot{I}=\frac{\dot{E}}{\dot{Z}+\dot{Z}_0} $$

と表される。

上記の文章を読むだけで鳳-テブナンの定理を使いこなすことができる人はいないのではないでしょうか。適用範囲が一般の回路網であれば何でもよいので、具体的に適用するべきタイミングをつかむには、経験・慣れが必要です。

では具体的に、どのように学び、経験・慣れを積んでいけばよいのか、令和2年度に出題された、具体的に「鳳-テブナンの定理」を利用せよという問題を例に解説します。

問 10 図の回路のスイッチを閉じたあとの電圧v(t)の波形を考える。破線から左側にテブナンの定理を適用することで、回路の時定数[s]と\({v(t)}\)の最終値[V]の組合せとして、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、初めスイッチは開いており、回路は定常状態にあったとする。

令和2年度「理論」問10より鳳-テブナンの定理を利用する問題
令和2年度「理論」問10より鳳-テブナンの定理を利用する問題選択肢
図2 令和2年度「理論」問10より鳳-テブナンの定理を利用する問題

この問題文には「鳳-テブナンの定理」を利用せよと明示されていて、回路もシンプルです。「鳳-テブナンの定理」を適用してみるのにちょうどよい回路ですので引用しました。

図2に「鳳-テブナンの定理」を適用すれば、図3のようになります。

図3 鳳-テブナンの定理の適用
図3 鳳-テブナンの定理の適用

「鳳-テブナンの定理」は一般の回路網であれば、適用範囲は交流回路や直流回路に限定されず、過渡現象を伴うものにも適用できます(詳しく言えば、抵抗・コイル・コンデンサのような線形素子で構成される回路網なら一般に適用でき、ダイオードやトランジスタのような非線形素子を含むと適用できません)。 

「鳳-テブナンの定理」における「起電力」は、2端子を開放したときの電圧で、図3の左側で求められています(2.5 V)。「鳳-テブナンの定理」における「内部抵抗(インピーダンス)」は回路網の電圧源をすべて短絡したときの両端抵抗であり、図3の右側で求められています(0.75 Ω)。

これら「起電力」と「内部抵抗(インピーダンス)」の情報から、回路は図3の下側のように、電圧源と抵抗(インピーダンス)が直列接続された回路、すなわち電池の等価回路として置き換えることができるのです。

「鳳-テブナンの定理」は、\(\dot{I}=\frac{\dot{E}}{\dot{Z}+\dot{Z}_0}\)という公式を暗記することが本質ではなく、任意の回路を電池の等価回路(電圧源とインピーダンスの直列接続)で置き換えられるということが本質なのです。

 上記のように、「鳳-テブナンの定理」の本質を理解していれば、置き換えられた等価回路は\({CR}\)直列回路の一番基本的な過渡現象の問題に置き換えられます。

時定数は、 

(時定数) =(抵抗)・(静電容量)
=0.75[Ω]・1[F]=0.75[s]

で、電圧の最終値は、起電力の2.5 V がそのまま印加されることとなり、答えは(2)であることがすぐにわかります。

勉強量と点数の関係

さて次は、「理論」の難しさを、勉強量と点数の関係から示します。わかりやすい比較例として、第二種電気工事士(以下、二種電工)を挙げましょう。二種電工の筆記試験は電験三種に比べればやさしいのは当然ですが、その理由をよくよく考えてみましょう。

二種電工の筆記試験の場合は、一つの内容、例えばオームの法則での計算や、器具の名称・用途を覚えることで、すぐに得点に結びつけることができます。そこで、二種電工の筆記試験における勉強量と点数の関係を図4に示します。

図4 二種電工での勉強量と点数の関係
図4 二種電工での勉強量と点数の関係

横軸に勉強量を、縦軸に得点し得る点数とすると、点数はおよそ直線的に増加します。グラフの下に、具体的な勉強内容としてコンセントの用途ごとの分類が示されています。二種電工の筆記試験ではこれらを覚えるだけで一つの項目をクリアし、得点につなげることができるのです。

一方、電験三種、特に「理論」の場合は勉強を始めてすぐに得点は上がりません。一つの分野を勉強しても、出題される問題が複数の分野にまたがった応用問題になってるので、なかなか点数につながらないのです。図5に勉強量と点数の関係を示します。

図5 電験三種の理論での勉強量と点数の関係
図5 電験三種の理論での勉強量と点数の関係

初めは勉強量が増えてもなかなか得点にはつながりませんが、あるところから点数が増え出します。

グラフの下側に、具体的な勉強内容として、先に挙げた令和2年度「理論」問10 に必要な内容を示します。大きく2つ、「鳳-テブナンの定理」と「過渡現象」が必要です。

ただ、「鳳-テブナンの定理」を適用するためには、内部抵抗を求めるテクニック(直並列の合成抵抗)や起電力を求めるテクニック(キルヒホッフの電圧則など)が必要になります。「過渡現象」も、単に時定数を計算すればよいだけではなく、最終値の求め方を\({C}\)や\({L}\) の性質から導出できなければなりません。

さて、「理論」科目について述べましたので、次はほかの科目について述べたいと思います。

「電力」の論述、「機械」の4キ(直流機・同期機・誘導機・変圧器のこと)以外の分野と「法規」については二種電工と同じように、勉強量が点数につながりやすいといえます。一方、「電力」の計算問題、「機械」の4キは「理論」と同じように、初めのうちは勉強量に点数がついていかず、ある一定の勉強量のところから点数が伸びていくような科目です。

以上のようなことを知りながら勉強を進めていけば、焦りや苛立ちも少しは抑えられるかもしれません。勉強に向けた作戦も立てやすいですね。

例えば、今から来年度に向けて勉強するのでしたら、「理論」を一周し、「電力」と「機械」の各論を勉強しつつ「理論」を参照・復習する。「法規」科目は暗記すべきこと(電気事業法や電気技術設備基準)が多いため、勉強は最後に回すなどがよいプランではないでしょうか。

4キを制する者は「機械」を制す

「機械」は出題範囲が広く、計算問題も論説問題も出題されるので、「理論」に負けず劣らず難しい科目です。そのため、優先順位をつけて出題頻度の高い分野を攻略していく必要があります。

ここ最近の出題頻度を分析すると、最も出題頻度が高いテーマはパワーエレクトロニクス(パワエレ)です。

A 問題では論説問題、B問題では計算問題が出題されます。年度によってはA 問題で1問、B 問題で1問出題されることもあります。令和3年度は問11 と問16 で出題されました。一昔前の「機械」ではパワエレの問題が難しすぎたので、「パワエレは捨てる」というのが常套手段だったのですが、最近は出題頻度の高さから無視できません。

ただし、難しい問題まで完璧に解けるようになる必要はありません。基本的な内容が出題されるA 問題の1問とB 問題の(a)に対処できるようになれば十分です。

次に出題頻度が高いのが4キで、僅差ですが、高いほうから順に同期機、誘導機、直流機、変圧器の順になっています。

4キを学習する上で重要になるのが各キの類似性です。例えば、変圧器と誘導機の等価回路はほぼ同じです。変圧器の二次側を短絡して回転させたのが誘導機ですから、両者の等価回路は非常に似ています。また、直流機と同期機は電機子反作用があるという点で共通しています。ただし、特性はまるで異なるので注意が必要です。

学習する順序ですが、オススメは直流機→変圧器→誘導機→同期機です。直流機は「理論」の直流回路がわかっていれば、無理なく学習を進めることができます。ほかの機器は交流を使用しているので、三相交流を理解しておく必要があります。また、同期機は誘導機と直流機を合わせたような構造をしているので、最後に学習するとよいでしょう。

合格には「ねばり強さ」が必要

電験は幅広く深い内容が問われます。したがって、当たり前ですが、学習には「ねばり強さ」が必要です。電験を指導させていただいておりますと、合格する人と不合格になる人の決定的な違いは「ねばり強さ」だと感じます。学生であれ社会人であれ、有限である貴重な時間をいかに活用し、効率よく勉強するにはどうすればよいか、自分のリソースを最大限活用できるように努力し続けている方は合格を勝ち取っています。

末筆になりますが、本稿が電験を学ばれる方のガイドラインとなり、少しでも応援になることを願っています。

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